THE PROCESS
KORI ANRI JAPAN の物語
私たちの仕事は
一枝の「コリヤナギ」から始まります。
ヤナギ科の落葉低木 -
風にしなやかに揺れるその姿は、強く、そして美しい。
放っておいても育つ植物ですが、私たちはあえて手をかけ、時間をかけます。畑に立ち、土をならし、四季とともに育てる。冬の寒さを耐え抜いた枝を収穫し、一本一本、皮を剥ぐ。その手触りと香りを確かめながら、ようやく「材料」へと生まれ変わります。
コリヤナギには「タンニン」という成分が宿ります。赤ワインの渋みと同じ、自然が与えた防虫の力。この力をそのまま活かすため、私たちは丸木のまま編み上げます。なかでも「飯行李」は、芯にあるワタが湿気をやわらげ、旅先でもご飯をふっくら美味しく保ちます。
理にかなった機能と
職人の手が生み出す編み目の美しさ——
それは使うほどに手になじみ、伝統は暮らしに息づく。畑から製品まで、すべての工程に私たちの手と時間を注ぐ。その理由はただひとつ。
本物の手仕事だけが生み出せる
確かな美しさを届けたいから。
DETAIL

春 - 株元から新芽が萌えはじめる頃。
前年の十二月に刈り取り、冬を越させたコリヤナギの山を解き、再び地面へと挿し直す。
仮死状態だった枝に春の陽を感じさせ、もう一度芽吹かせるのは、皮を剥ぎやすくするため。
よみがえったコリヤナギを収穫し、今度は一本一本、ていねいに皮を剥いでゆく。
剥き終えた枝は、乾く前に流水でしっかり揉み洗い。
そして晴れ間を見計らい、数週間、天日に干す。

夏 - 天へ向かって、真っ直ぐに伸びゆく頃。
製作に励む束の間、コリヤナギ畑には雑草が勢いよく生い茂る。
雑草や害虫の管理を怠れば、美しい材料には育たない。だからこそ、草取りは怠れない。
草刈りの合間には「芽かき」も行う。
株の年を重ねるほど枝分かれが増えるため、若いうちに不要な芽を摘み取っておくことで、まっすぐで質の良い材料へと育つ。
この作業は、夏の手入れの中でも、とりわけ大切な工程だ。

秋 - 穂先が金色に輝き、風に揺れる頃。
雑草や害虫の管理は変わらず続け、手間を惜しまず育てるコリヤナギ。
一年を通しての作業の積み重ねが、枝分かれの少ない美しい姿を育む。
やがて秋も暮れ、成長は静かに止まる。
秋風に揺られながら、葉は一枚また一枚と舞い落ちてゆく。
あとは、静かに冬を迎える時を待つだけ。

冬 - 一年の成長の集大成が訪れる頃。
全国的にも降雪が多い豊岡。
大切に育てたコリヤナギが雪の重みで倒れぬよう、本格的な降雪の前に「刈取り」を行う。
鎌や剪定鋏で刈り取った枝は、程よい割合で束ねてゆく。
作業を終えると、あらかじめ用意しておいた適度な水溜まりに束を立て、大きな一束を最後にひとくくり。
こうしてコリヤナギは、静かな「冬越し」へと入ってゆく。